遺言執行者とは?役割や義務などを解説します
遺言を残す際に考えておかなければいけないのが「遺言執行者」という存在です。遺言執行者は、遺言内容を正確かつ確実に実現するための責任者としての役割を担います。この記事では、遺言執行者の基本的な役割や選任方法、注意点について解説します。

1.「遺言執行者」とは?
遺言は、遺言を残した方が亡くなった時からその効力を生じますが、特別な手続きを行わなくても遺言の内容が実現されるもの(例:長男に財産の80%を、次男に20%を相続させるなど)と、遺言の内容の実現のために所定の手続きを行う必要があるもの(例:推定相続人の廃除)の2種類があります。
このうち、後者のように遺言の内容の実現のために必要な手続きを行うことを遺言の執行といい、その責任者となる人のことを遺言執行者といいます。
2.遺言執行者の役割と義務
遺言執行者になった者は、遺言の内容を実現するために相続財産の管理を含む一切の行為を行うことができるとされています。権限が大きいがゆえに、遺言執行者として守らなければならない義務もありますので、知っておく必要があります。
- 任務の開始・相続人への通知義務
遺言執行者は、直ちに任務を開始すること、遺言の内容を遅滞なく相続人に通知する義務があります。就任したことや遺言の内容を相続人に通知することで、相続人全員が状況を正しく理解し、適切な対応を取ることができます。これにより、情報の非対称性によるトラブルを未然に防ぐことができます。 - 財産目録の作成・交付義務
遺言執行者は、亡くなった方の有する財産を調査し、財産目録を作成しなければなりません。財産の全体像を把握し、透明性が確保され、後々の誤解や紛争を防止することが目的です。 - 善良な管理者の注意義務
遺言執行者は、遺言の執行を行うにあたり、「善良な管理者の注意」をもって任務にあたらなければなりません。これは、自分のためではなく、亡くなった方の遺言の実現という目的のために行うことに念頭において任務に当たらなければいけないということです。 - 報告義務
遺言執行者は、相続人から請求があった場合、遺言執行者は遺言執行の状況や結果を報告しなければなりません。また、遺言執行が終了した後は、遅滞なくその結果を相続人に報告する義務もあります。
この他にも、受取ったものを引き渡す義務や、遺言の執行に際して金銭を消費があった際に損害を賠償する義務などもあります。
3.遺言執行者はどうやって選ぶの?
3-1.遺言で指定する
遺言執行者は、遺言を遺す方が遺言の中で指定することができます。遺言執行者として指定された方は、そのまま就任することもできますし、その就任を断ることもできます。
3-2.家庭裁判所が選任する
遺言の中で遺言執行者の指定がない時や、遺言執行者として指定があっても指定された人が就任を断った時、あるいは就任する・しないをはっきりしない時は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる必要があります。
なお、遺言の内容を鑑みて遺言執行者を選任する必要がないと家庭裁判所が判断した場合や、遺言の内容が無効である場合などは、申し立てが却下されることもあります。
4.遺言執行者になることができる人は?
遺言執行者は、未成年者および破産者でない限り誰でもなることができます。また、個人だけでなく法人でも可能で、人数制限もありませんが、選任にあたり、留意しておかなければならないこともあります。
4-1.相続人を選任する場合は注意が必要
上記の欠格事由にあたらない限り、相続人の方でも遺言執行者になることが可能です。しかし、遺言執行者に選任されなかった他の相続人から「自己に有利な遺言執行をするのではないか?」との疑念を抱かれ、相続人の間でトラブルになる可能性もあります。
また、相続手続きには亡くなった方の各種手続きだけでなく、財産調査、亡くなった方の戸籍謄本を取り寄せて相続人の確定を行う、相続人間で相談して財産を誰にどれだけ相続するかなど、大変な手間と時間がかかってしまいます。
また、遺言書で遺言執行者として指定された相続人が、高齢になっていたり病気やケガで思うように動けない状態になっていたりすると、より負担は大きなものになります。
4-2.外部の専門家に依頼をするメリット
遺言執行者を行政書士を含めた専門家に依頼することで、法律知識に基づいて遺言の内容を正確に実行し、手続きを迅速に進めることができます。また、専門家を窓口にすることで専門家同士のネットワークを利用することもでき、相続税のことは税理士に、紛争が起きたら弁護士につなぐなど、事案に合わせたサポートが受けられます。
さらに、中立的な立場で相続人間の調整を行うため、トラブルの防止にもつながります。特に、相続人全員が協力しなければならない状況では、意見の食い違いによって相続手続きの遅れが生じる可能性があります。このような事態を防ぐためにも、遺言書の作成の段階から専門家のサポートを受けることをおすすめします。
5.まとめ
遺言執行者については、それ自体の知識だけでなく相続に関する知識も身に着けておかなければなりません。また、相続手続きは煩雑で手間のかかるものであり、並行して相続人同士での調整もしなければいけないので大変時間のかかるものです。
相続が始まってから慌てて準備を進めると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。「終活について考えたい」「自分の財産を誰かに相続したい」など、相続について考えたり、遺言の作成について検討を始めた段階で専門家に相談することをおすすめします。
当事務所でも受け付けておりますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。