遺言書を見つけても勝手に開けてはダメ!遺言書の「検認手続き」について
1.遺言書を見つけたら?
親族が亡くなり、部屋の整理をしていていたところ、引き出しの中から「遺言書」と書かれた封筒が…
どうやら亡くなった親族が、生前密かに作成しておいたようです。
このように遺言書を見つけた場合、遺族の方であっても勝手に開けてはいけないのはご存じでしょうか?
この記事では、家庭裁判所において行わなければならない遺言書の検認手続きについて解説します。
2.検認手続きとは
検認手続きについては、民法で下記のように規定されています。
(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2-1.検認手続きの目的
検認手続きとは、遺言者の死亡を知った後、遺言書を発見した人や保管していた人が家庭裁判所に申立てを行い、相続人の立会いのもとでその内容を確認することです。
検認の目的は、相続人に対して遺言書の存在と内容を知らせること、遺言書の状態を確認して偽造や破棄を防ぐことにあります。
2-2.注意点
検認手続きは、遺言書の内容の確認と証拠保全を行うものにすぎず、その遺言書に効力があるかどうかを判断するものではないことに注意が必要です。よって、検認手続きを経たとしても、内容に不備があれば効力が認められず、その遺言書が無効になる可能性もあります。
※自筆証書遺言の書き方については、こちらもご参照ください。
2-3.検認手続きをしないとどうなる?
家庭裁判所外での遺言書の開封、検認手続きをせずに遺言を執行した場合は、5万円以下の過料が課せられるペナルティがあります。
また、検認手続きが完了しなければ、遺言の執行の際に必要となる「検認済証明書」の発行の申請ができません。
検認済証明書は、預金口座の名義変更や不動産の登記名義の変更の際に金融機関や法務局に提出する必要な書類のため、検認手続きを経ずに遺言書を開封してしまうと、相続手続きそのものが出来なくなってしまう可能性があります。
検認手続きは遺言書の効力の有無にかかわるものではありませんが、遺言書を発見した場合は必ず行いましょう。
3.検認手続きが不要なケース
公正証書遺言および法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言の場合は、検認手続きを行う必要がありません。
言い換えると、遺言者本人が保管していた自筆証書遺言および秘密証書遺言の場合は、検認手続きが必要となります。
4.検認手続きの流れ
検認手続きには一般的に下記のような流れで進めます。
①相続人の確定
遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍および相続人全員の戸籍謄本を集め、「誰が相続人なのか」を確定させます。
②検認申立書の提出
遺言書を発見した人もしくは保管していた人が、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に、上記の必要書類ともに検認申立書を提出します。最高裁判所のホームページに検認申立書の様式や記載例があります。遺言書1通につき収入印紙800円分と連絡用の切手代がかかります。
③家庭裁判所から申立人・相続人へ通知
申立てから約1か月後に、家庭裁判所から申立人および相続人に検認の期日の通知が来るので、日程調整を行います。相続人は全員出席する必要はありませんが、申立人は必ず出席する必要があります。
④家庭裁判所で検認を行う
検認当日、申立人は遺言書を家庭裁判所に持参し、出席した相続人の立会いのもと、検認手続きを行います。所要時間は10分~15分程度です。家庭裁判所の書記官が遺言書の状態を確認し、「検認調書」にまとめます。なお、出席しなかった相続人には、家庭裁判所から後日連絡が入るようになっています。
⑤検認済証明書の発行の申請
申立人または相続人は、遺言執行の際に必要となる「検認済証明書」の発行を申請します。遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。
検認手続きの申立書を提出してから期日の確定まで約1か月、戸籍謄本を収集するなどの準備期間を含めると、約2か月程度かかることに留意しておきましょう。
5.検認手続きは手間と時間がかかる
「亡くなった後の自分の遺志を遺言書として残しておきたい」という方は多いと思いますが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、上記のような検認手続きが必要となります。
検認手続きには手間と時間がかかるため、自分が亡くなった後の相続人の負担が大きくなってしまう場合があります。また、せっかく検認手続きをしても、要件を満たしていなければ効力が認められないこともあります。
より確実な遺言を残したいという場合には、自筆証書遺言ではなく公正証書による遺言を残すこともひとつの手段です。
「まだ自分も家族も元気だし、遺言はまだ早いかな…」と思っている方でも、遺言の種類を知り、早いうちからどんな遺言を残したいか?という検討をしておくことは大切です。