自筆証書遺言の書き方・注意点

遺言書と聞くと、直筆で手紙を書いて封筒に入れて…というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。このような遺言は「自筆証書遺言」と呼ばれますが、よく調べずに作成すると、正式な遺言書として認められず、無効になってしまうことも。
この記事では、自筆証書遺言の作成の手順や注意点について解説していきます。

1.自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言は、遺言者本人が、他人の手を借りず、手書きで作成する遺言書です。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない


書き方や様式については、民法によって規定されています。

2.自筆証書遺言の要件

有効な自筆証書遺言を残すためには、下記の要件を満たす必要があります。これらの要件を守らないと、遺言書が無効となる可能性がありますので、注意が必要です。

全文を自書する

自筆証書遺言は、遺言者自身がすべて手書きする必要があります。遺言の内容をパソコンで打ち込んだり、他人に代筆させることは認められません。

②日付を記載する

遺言書には必ず日付を記載しなければなりません。「2024年5月20日」など、客観的に見てわかる日付を明記します。「2024年5月」や「2024年春」など曖昧な表現は無効となる可能性があります。

③署名する

遺言者本人の署名が必要です。これにより、遺言が本人の意思で作成されたことを示します。

④押印する

署名に加えて、印鑑を押印します。認印でも法的に問題はありませんが、後にトラブルになるリスクが高くなるため、実印を使用することが推奨されます。

3.遺言書が無効になってしまうケースとは?

様式の不備や不足があると、せっかく作った自筆証書遺言が無効になってしまう場合があります。

手書きでない部分がある

例:本文は手書きでも日付が印刷されている
一部でも手書きでない部分が含まれている場合、遺言書が無効とされる可能性があります。

日付が不明確

例: 「2024年5月」「6月吉日」などの記載
前述の通り、日付が曖昧である場合、遺言書全体が無効となる可能性があります。

署名・押印漏れがある

例:他人が署名をしている、押印漏れがある
遺言者本人の署名や押印がない場合、その遺言書は無効になります。

内容が法律に反する

例:不法行為について書かれている
遺言書の内容が法律に反する場合、その部分が無効とされる可能性があります。

4.財産目録について

自筆証書遺言を作成するにあたり、財産目録を添付する場合、その財産目録については自書しなくてもよいということになっています。

第九百六十八条の2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。


パソコンなどで目録を作成してもかまいません。また、不動産の場合は登記事項証明書のコピー、銀行預金の場合は、銀行名・口座番号や口座名義人が分かる通帳のページのコピーを目録として添付することも可能です。

その場合は民法の規定通り、記載されているページの全てに署名と押印が必要となります。

5.自筆証書遺言を訂正する場合

自筆証書遺言の訂正については、下記のように規定があります。

第九百六十八条の3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつその変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。


遺言書の内容に加筆したり訂正したりする際、修正テープや消しゴムは使えませんので、民法の規定通りに訂正を行う必要があります。
下記はその一例です。


なお、この規定は遺言書の本文だけでなく目録についても同様です。
訂正の仕方を間違えると遺言書が無効になってしまいますので、注意が必要です。

6.注意点

自筆証書遺言は手書きであることで、遺言者の真意を反映することができますが、民法の規定を守らなければ遺言書が無効になってしまう可能性があるのは前述のとおりです。

また、下記のようなリスクもあります。

・改ざんされる可能性がある
第三者によって内容が改ざんされたり差し替えられてしまう可能性があります。

・紛失・盗難・破棄の恐れがある
書いたことを忘れたり保管場所を忘れてしまうと、遺言者の意思が伝わらないまま相続がなされてしまう可能性があります。
また、遺言書を見つけた者が盗んでしまったり、こっそり破棄してしまう可能性もあります。

さらに、遺言書は相続人が勝手に開封することができません。家庭裁判所で相続人の立ち会いのもと、検認の手続きが必要となります。
検認の手続きには約2か月かかりますので、遺言書を見つけてもすぐに相続手続きが始まるかというと、そうではありません。

7.遺言については当事務所にご相談ください。

遺言は、遺産相続におけるトラブルを未然に防ぐための重要な手段です。遺言書を残すことで、遺族間の争いを避け、遺産分割がスムーズに行われるようにすることができます。

当事務所では遺言作成のご相談を承っておりますので、ぜひ一度ご相談ください。

Emu行政書士事務所

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