親が亡くなったら、いつまでに、何をすればいい?必要な手続きとは
親や親族が亡くなった時、いつ何をすればいいか、あなたは答えられますか?早めのうちから知っておきたい手続きをまとめましたので、おさらいしておきましょう。

【亡くなってから7日以内】死亡届の提出
役所に死亡診断書と一緒に死亡届を提出
人が亡くなったら、病院の医師からもらえる「死亡診断書」と合わせて、市区町村役場に「死亡届」を提出しなければなりません。提出先の役所は、亡くなった方の本籍地、亡くなった場所、または届け出をする者の住所地を管轄する市区町村役場のいずれかになります。
また、役所に死亡届を提出すると、「火葬許可証※1」がもらえます。これを火葬場に提出する必要がありますので、葬儀の際には忘れずに持参しましょう。
※1 それぞれの市区町村で名称や手続きが微妙に異なるケースがあります。
なお、死亡診断書は提出前に複数枚コピーを取っておくことを忘れないようにしましょう。保険会社や各種サービスの解約時に役所には原本を提出してしまうので、5枚程度はコピーを残しておきましょう。
【亡くなってから10日~14日以内】年金や健康保険の手続き
年金の手続き
年金受給者の死亡届は、日本年金機構にマイナンバーが収録されている方が亡くなった場合は原則不要です。
なお、日本年金機構にマイナンバーが未収録の人、住民票の住所と異なる場所に住んでいる人、成年後見を受けている人は届出が必要です。
亡くなった方のマイナンバーが収録されているかどうかは、年金事務所へ問い合わせると確認ができます。
また、年金受給者が亡くなったときにまだ受け取っていない年金がある場合は、未支給年金としてその方と生計を同じくしていた親族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の三親等内の親族)が受け取ることができます。この場合、別途必要書類の用意や手続きが必要となります。年金の種類によって問い合わせ先が異なりますので、注意が必要です。
・障害基礎年金、老齢基礎年金等:市区町村役場の年金に関する窓口、年金事務所
・老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金等:年金事務所
・共済年金:各種共済組合
健康保険の手続き
・国民健康保険加入者の場合
死亡届を提出すると国民健康保険の資格を喪失しますが、保険証または資格確認書の返却手続きが必要となります。なお、亡くなった方が世帯主の場合は、同一世帯で保険証の書き換えが必要となるので、他の被保険者の保険証も提出が必要となる点に注意が必要です。
・社会保険加入者の場合(サラリーマンなど)
社会保険加入者については、勤務先である会社が手続きを行います。亡くなったことを連絡し、勤務先に保険証を返還します。
【速やかに】公共料金等の解約手続き
役所への届出の手続きと並行して、水道・電気・ガスなどの公共料金、クレジットカードのほか、各種民間サービスの解約手続きも行いましょう。
亡くなった方がどんなサービスを契約していたかはっきり分からない場合は、銀行口座やクレジットカードの引き落としの履歴を確認することで判明する場合があります。
【速やかに】遺言書があるかどうかを確認
相続はご親族が亡くなったことを知った時からスタートしています。亡くなった方が遺言書を残していないかどうかを、早い段階で確認する必要があります。
公正証書遺言の探し方
全国の公証役場で公正証書遺言を残しているかどうかを確認できるので、最寄りの公証役場に問い合わせましょう(遺言検索)。なお、遺言検索ができるのは相続人等に限られます。
また、公正証書遺言を作成すると、遺言者には遺言書の正本と謄本が渡されているはずですので、亡くなった方がどこかに保管しているケースもあります。
※公正証書遺言についてはこちら
自筆証書遺言の探し方
公正証書遺言と違い、自筆証書遺言は亡くなった方が秘密裏に遺していることが多く、そもそも「遺言を残しているかどうか」がとても分かりづらいものです。法務局の保管制度を利用している場合は「遺言書保管事実証明書の交付請求」で判明しますが、保管制度を利用していない、もしくは利用しているかどうか分からない場合は、亡くなった方の遺品や荷物を整理しながら探すしかありません。
なお、自筆証書遺言の場合、遺品や荷物の中から遺言書を見つけても勝手に開封できませんし、裁判所での検認手続きが必要となることに注意が必要です。
※自筆証書遺言についてはこちら
【亡くなってから3カ月以内】相続人の確定、相続財産の調査
相続人の確定
相続を行うためには、まず誰が相続人なのかを正しく把握しなければなりません。
そのためには、亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本を集めなければなりません。離婚歴があり子供がいるケースなど、相続人の順位に変更が生じることがあるため、抜け漏れがないように注意する必要があります。
この戸籍謄本について「亡くなった時の戸籍謄本のみを取得すればよい」と勘違いされている方がおられますが、相続手続きで必要となるのは出生から死亡までの全ての戸籍謄本です。戸籍謄本は本籍地で取得するものですので、本籍地が移転している場合などは、それぞれの本籍地の役所へ請求して取得する必要があります。
戸籍謄本は亡くなった方の配偶者もしくは直系血族の方であれば請求できますが、死亡にともなう諸手続きを進めながらそれぞれの本籍地に出向いて取得するのは一苦労です。郵送での請求も可能ですが、郵便事情もあり、全ての戸籍謄本を自力で揃えるのには大変な手間と時間がかかります。
相続財産の調査
亡くなった方が保有していた財産のうち、相続の対象となる財産を「相続財産」と呼びます。
相続財産は、プラスの財産(現金、預貯金、不動産、有価証券など)とマイナスの財産(借金など)に分けられます。
それぞれの財産を証明する資料を収集して財産を特定した後は、財産目録を作成しておくことが望ましいです。遺産分割協議や相続税申告の際にあると便利です。
【亡くなってから3カ月以内】相続放棄するかしないかを決める
相続するか・しないかは亡くなってから3カ月以内に決める
相続放棄もしくは限定承認をする場合、被相続人が亡くなったことを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申告しなければなりません。3カ月を過ぎても何もしなかった場合は単純承認をしたとみなされ、プラスの財産とマイナスの財産全てを引き継ぐことになります。
「亡くなった方の借金を相続したくない」「借金がありそうだが、どれぐらいあるか分からない」といった場合に相続放棄もしくは限定承認を検討する必要が出てきます。どちらも3カ月以内に手続きをしなければいけませんので、相続人の確定や財産調査を含め、早めに動かなければなりません。
【亡くなってから10カ月以内】法定相続分と異なる場合、遺産分割協議を行う
相続人が誰になるのか、プラスの財産・マイナスの財産はどれぐらいあるのか、相続人が単純承認・限定承認・相続放棄どれで進めるのかを確認したのち、「財産について、誰が、何を、どれだけ相続するのか」を相続人全員で話し合うことを遺産分割協議といいます。
民法で定められた法定相続分とは異なる割合で財産を分ける場合には遺産分割協議を行う必要があり、この協議の内容をまとめたものを遺産分割協議書といいます。
遺産分割協議をいつ行うか明確な期限が定められているわけではありませんが、亡くなってから10カ月以内に相続税の申告を行う必要がありますので、それまでに相続人間で話し合いをまとめ、遺産分割協議書を作成しておく必要があります。
なお、遺言書がある場合は、遺言書の内容が法定相続分や遺産分割協議よりも優先されますが、相続人全員の合意により、新たに遺産分割協議をすることは可能です。
協議がまとまらなかった場合は?
遺産分割協議で相続の内容がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停をしてもまとまらない場合は審判へと移行し、裁判所が遺産分割について決めることになります。
協議がすんなりまとまれば良いのですが、相続財産を巡って思わぬトラブルや揉め事が生まれるケースも少なくありません。調停や審判まで進んでしまうと時間も労力も使ってしまうことになりますので、相続が発生する前から備えておくことが重要となります。
【亡くなってから10か月以内】相続税の申告
亡くなってから10か月以内に、相続税の申告を行う必要があります。なお、相続税は相続財産全てにかかるのではなく、基礎控除額を超えた分にのみ課税されますので、基礎控除額を超えない場合は相続税の申告の必要はありません。
基礎控除額は、3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)で計算できます。
例えば法定相続人が3人の場合の基礎控除額は「3,000万円 + (3人 × 600万円) = 4,800万円」となりますので、この場合は4,800万円を超えなければ相続税の申告は不要です。
なお、税額の詳しい計算については、税理士へ確認が必要です。不動産や預貯金、有価証券といった複数の財産がある場合は相続税の計算が複雑になりますので、早めに確認しておきましょう。
まとめ:早い段階から専門家に相談を
大切なご親族の方が亡くなった時は、肉体的にも精神的にもつらい時期が続くものです。
しかし、亡くなったことを知ってから3カ月以内には、戸籍謄本を全て集め、どんな財産があるのかをまとめた上で、相続するかしないかを決めなければなければなりません。とにかくやらなければならないことが多く、残されたご遺族の方の負担は並大抵のものではありません。また、遺産分割協議も、相続人同士で話し合いをまとめなければなりませんが、協議がまとまらず「争族」になってしまうご家族も少なくありません。
「相続手続きがきちんとできるか不安だ」「相続について早いうちから相談したい」と考える方も多いのではないでしょうか。
行政書士などの専門家に相談すれば、相続人調査や遺産分割協議書の作成など、煩雑で手間のかかる相続手続きにおいて、さまざまなサポートを受けることができます。
当事務所でも、お客様のお話やお気持ちをしっかりお伺いした上で、どのようなサポートが可能かを一緒に検討させていただきます。
ぜひ、お気軽にご相談ください。